残業代等請求権の消滅時効と受任後の対処方法
残業代請求権の消滅時効
いわゆる残業代は、「賃金」の一種ですから、「権利を行使できる時」から「2年間」が経過することにより、時効消滅します(民法166条1項、労働基準法115条)。
たとえば、「毎月の給料を、翌月25日に支払う」会社であれば、平成〇年1月分の残業代(を含む「賃金」。以下同じ)は同年2月25日に、同年2月分の残業代は同年3月25日に、それぞれ、支払を請求できる(=「権利を行使できる」)ことになります。
そのため、平成〇年1月分の残業代請求権は、同年2月25日(の翌日。民法140条)から2年の経過により、同年2月分の残業代請求権は、同年3月25日(の翌日)から2年の経過により、時効消滅します。
民法174条1号は、給料債権は、「1年」で時効消滅すると定めていますが、労働基準法は、「労働者の保護」(同法1条)のため、この期間を、「2年」に伸長しています。しかし、今後数年のうちに、民法が改正され、民法174条は削除される予定です(改正後の民法166条1項により、他の債権と同様、「権利を行使することができることを知った時から5年間」「権利を行使することができる時から10年間」で時効消滅することになる予定です。)。
そうすると、上記民法改正後も、給料債権が「2年」(労働基準法115条)で時効消滅するとすれば、かえって、他の債権より短い期間で時効消滅してしまうことになり、「労働者の保護」(同法1条)に役立ちません。そこで、現在、上記民法改正にあわせて、労働基準法115条の改正も行うべきではないか、という議論がなされており、この点について、今後の法改正の動向が、注目されます。
退職金請求権の消滅時効
退職金は、「退職手当」として、「権利を行使できる時」から「5年間」が経過することにより、時効消滅します(民法166条1項、労働基準法115条)。
残業代の時効消滅を防ぐ方法は?(受任後の対処方法)
「1」のとおり、残業代は、2年間の経過により、時効消滅します。他方、裁判で残業代を「請求」すれば、時効が中断され(民法147条1号)、残業代請求権の時効消滅を防ぐことができます。
もっとも、裁判を行うためには(裁判所に訴えを提起するためには)、相応の準備期間が必要ですから、当該準備期間中にも、毎月分の給料は、刻一刻と時効消滅していくことになります。
そこで、実務上は、裁判等を行う前に、まず「催告」(民法153条)を行い、「6ヶ月」の間、消滅時効が完成することを防ぎつつ、その後6ヶ月以内に裁判を行う等の方法により、できる限り多くの残業代を請求することが、一般的です。具体的には、残業代請求事件を受任した弁護士は、まず、残業代を請求すべき相手方に対して、内容証明郵便等による通知を行い、これと並行して、裁判等の準備にかかります。
当事務所では、残業代請求に関する多くのノウハウを有しており、内容証明郵便の作成や、その後の通知、裁判等の準備などを、迅速に行うことができます。残業代請求については、初回相談無料でお受けしておりますので、是非、お気軽に、当事務所までご相談ください。
その他
残業代請求の消滅時効に関しては、「不法行為として、実質的に残業代にあたる部分の請求ができるか」、「付加金については、いつまで請求できるか」、「裁判ではなく、労働審判を行う場合には、どのようにして、残業代請求権が時効消滅することを防ぐか」など、検討すべき事項が多くあります。残業代請求については、初回相談無料でお受けしておりますので、是非、一度、当事務所までご相談ください。